順を追って話そう。1981年にトム・シルヴァーマンが立ち上げた〈 Tommy Boy 〉は、1985年からワーナーとパートナーシップ契約を交わしていた。しかし、ヒップホップの市場規模が成熟しきった2002年にワーナーとの協業関係は解消され、再びインディペンデントに戻る。その際に、協業期間中(1985年〜2002年)のカタログの原盤権はワーナーの所有となったため、〈 Tommy Boy 〉はデ・ラのアルバムをコントロールすることができなくなった。
そしてワーナーはカタログこそ所有していたが、デジタル配信には前向きではなかった。それは前述したサンプリングの権利処理の問題が理由だ。メンバーのポスは2016年のBBCのインタヴューで「あいつらは対応したがらなかった。こんな感じさ。『そこまでする価値あるのかい?』ってね」とワーナーに対して文句を垂れていた。だが実際のところ、デビュー・アルバムの『3 Feet High and Rising』だけでも70曲以上がサンプリングされているので、彼らのアルバム全ての曲のサンプリングの許諾契約を改めて巻き直すとなると骨が折れる作業となることは事実だろう。