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DITC随一のリリシストであったビッグ・Lは、今から23年前、1999年の2月15日に地元ハーレムの路上で顔と胸に9発の銃弾を受け、24歳の若さで命を落とした。事件から三ヶ月後、Lの幼馴染のジェラルド・ウッドリーが容疑者として逮捕されるが、その後、彼は証拠不十分で釈放されている。Lが襲われた理由は、彼の兄がしたことに対する報復だとも言われているが、未だ犯人は捕まっておらず、真相は闇の中である。“Street Struck”で「その先に待ち受けるのは撃たれるかムショ行きだ」と、ストリートの危険性を訴えていたLだったが、不幸なことに、彼は自身が警告していた通りの結末を迎えてしまった。
彼が残した功績は名盤として愛されるデビュー・アルバム『Lifestylez ov da Poor & Dangerous』と、死後にリリースされた『The Big Picture』という2枚のアルバムに限らず、地元の友人たちとチルドレン・オブ・ザ・コーン（コーナー）というクルーを立ち上げ、キャムロンとメイスというハーレム出身のスター・ラッパーの誕生に大きく貢献した。
そんな彼の功績を讃えるべく、5月28日、彼の出身地であるハーレムの140丁目通りとレノックス通りの交差点が「ラモント・“ビッグ・L”・コールマン・ウェイ」と改名された（Lが言うところの“Danger Zone”とは「’Cause one-three-nine and Lenox is the Danger Zone」なので、すぐ近くだ）。これは近日公開予定のLのドキュメンタリー「Street Struck」の制作チームが署名活動を行い、500人以上が署名した嘆願書によって正式に認可された。
あまり日本では馴染みがない文化だが、海外では著名人の名前にちなんだ通りは多く、例えばテネシー州のメンフィスにはエルビス・プレスリーにちなんだ「エルビス・プレスリー・ブールヴァード」という大通りがある。
ヒップホップのミュージシャンの名前にちなんだ通りで最も有名なものは、クイーンズの205丁目通りとホリス通りが交差するコーナー。そこはラン・DMCのDJであり、02年に凶弾に倒れたジャム・マスター・ジェイにちなみ、06年に「ラン・DMC・JMJ・ウェイ」と改名された。これ以降、特に近年、立て続けに各所で改名がされている。今回の「ラモント・“ビッグ・L”・コールマン・ウェイ」の誕生を機会に、これまでに改名されてきたヒップホップに関する地名を、NYに絞ってピックアップしてみよう。
Big L
名称：Lamont “Big L” Coleman Way
場所：ハーレム
改名年：2022年
※Google Mapのストリート・ビューは未更新。
Jam Master Jay
名称：RUN DMC JMJ Way
場所：クイーンズ
改名：2009年
Phife Dawg
名称：Malik “Phife Dawg” Taylor Way
場所：クイーンズ
改名年：2016年
Scott La Rock
名称：DJ Scott La Rock Boulevard
場所：ブロンクス
改名年：2017年
The Notorious B.I.G.
名称：Christopher “Notorious B.I.G.” Wallace Way
場所：ブルックリン
改名年：2019年
Wu-Tang Clan
名称：Wu-Tang Clan District
場所：スタテン・アイランド
改名年：2019年
Big Pun
名称：Big Pun Plaza
場所：ブロンクス
改名年：2021年
MF DOOM
名称：KMD MF DOOM Way
場所：ロング・ビーチ（NY）
改名年：2021年
※Google Mapのストリート・ビューは未更新。
さて、話は戻ってLのドキュメンタリーについて。今回の改名の署名活動を行ったのは「Street Struck」というタイトルのドキュメンタリーの制作チームだが、〈 Mass Appeal 〉も「Four Child: The Legend of Big L」という短編ドキュメンタリーを制作し、2020年5月にはトレイラーも公開していた。しかし「Four Child」はロード・フィネスやショウビズ、DJプレミアらLに近しい面々へのインタヴューがなかったためフィネスが公然と非難し、それ故か未だ公開されていない。同様に「Put It On」という自伝映画の企画もあったのだが、こちらもDITCが制作に関わっていないということで一悶着あり、おそらく頓挫した。「Street Struck」だけは平穏無事に公開されてほしいものである。
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