巨匠マーク・ザ・45キングを中心としたザ・フレイヴァー・ユニットの設立メンバー、ラキム・シャバズの1stアルバム。ジャケットに「The 45 KING presents…」と銘打たれているように、トータル・プロデュースを45キングが手掛けている。同じ45キングとラキムのタッグによる傑作“The 900 Number”や“We Got the Funk”(どちらも45キングの『Master of the Game』に収録)に比べると多少インパクトに欠けるかもしれないが、45キングらしいファンキーなビートと主役の巧みなファスト・ラップの化学反応が堪能できる本作は、80年代後半のラップ・アルバムで最もクオリティと評価が釣り合っていない作品の一つと言える。
エミネムが“Rap God”にて、ラキム(Rakimのほう)や2パック、NWAと並べて影響源として言及していたように、後続のMCにはフロウやスキル面で大きな影響を与えた存在であり、さらに言えば、そのアフロセントリックな装いやマルコム・Xの演説を引用したシングル“Black Is Black”からも明確なように、ファイヴ・パーセンターズとしての教えを盛り込んだコンシャス・ラップの先駆けでもある。このアルバムの後、メジャー最大手の〈 Epic 〉が、所属していた〈 Tuff City 〉との契約を30万ドル(当時の日本円で4,500万円相当)で買い取ろうとオファーした程度には業界内では評判の高いMCだったようだ。
先述の“The 900 Number”によって、ピート・ロックよりも数年早くホーン・サンプルをそのビート・メイキングの個性としていた45キングらしい作りの“Pure Righteousness”や「45(7インチ)の王」 という名に恥じない、ディープ・ファンクの名曲をサンプリングした“All True and Living”など、ジェームス・ブラウンのサンプルとは少し異なるファンクネスは癖になる。「黒帯ジョーンズ(原題:Black Belt Jones)」の主題歌をミニマルにループさせた職人技が光る“Sample the Dope Noise”もドープだが、白眉はメイズのソウル・クラシック“Before I Let Go”を下敷きにした“Getting Fierce”。“The 900 Number”や“We Got the Funk”に匹敵する名曲だ。