アウトキャストやTLCのプロデュースで知られるオーガナイズド・ノイズのメンバーであるスリーピー・ブラウンは、その名前の由来について、昔こう語っていた。「オレはビッグ・ダディ・ケインが大好きだったんだけど、彼はいつも眠そうに見えたんだ。で、思ったんだよね、『あんなにクールなもんある?!」って。だから自分のことを“スリーピー”って呼ぶようにしたんだ。オレにとっちゃ“眠そうな目”がクールの中のクールだったからね」
クールだったり、セクシーだったり、可愛かったり、感じ方はそれぞれだが、眠そうな目はいつだって人を惹きつける。そしていま、そんな“スリーピー・アイ”をトレードマークとする、日本で最も注目を集めるアーティストの一人がRISAである。ダンサー出身のバックグラウンドを活かした感性で、ヒップホップやR&Bをテーマにしたアートを描き続け、日本に留まらず世界をも魅了する彼女に話を伺った。Pay attention, ’cause IT’S HER TURN。
IMT
BE AT TOKYOのインタヴューを読ませていただきました。あれは過去の話が中心だったので、本日はどちらかと言えば現在やこれからの話についてお伺いしたいのですが、とはいえRISAさんの特徴と言えばスリーピー・アイなので、そのあたりも最初にちょっとだけお伺いしたいと思います。BE AT TOKYOのインタヴューでも語られていましたが、スリーピー・アイは狙って描いたわけではなくて、元々は不良っぽい、悪そうな顔をイメージして描いていたんですね。
RISA
以前、RAP ATTACKさんとコラボさせていただいた際に、紹介のところで「スリーピー・アイが独特な」って書かれていて。「眠たそうな眼だよね」とはそれより前から言われていたんですが、「スリーピー・アイ」とは言われていなくて、「眠そうな眼が特徴な絵を描いてる子だよね」って感じで。紹介文で「スリーピー・アイ」って書かれているのを見て、「あ、これいいな」って思って。
IMT
もう一つの特徴として、太い線が存在感を際立たせていると思いますが、これはキース・ヘリングからの影響なんですよね?
RISA
そうですね、昔からめちゃくちゃ大好きです。
IMT
それはヒップホップとは関係ない流れで?
RISA
はい、全然関係なく。アートとして色もすごい好きだし、キースの絵ってパッと見て誰でも「あ、キース・ヘリングだ」ってわかるじゃないですか。すごくシンプルで、シンプルなんだけどキースの絵って誰もがわかる。反戦やエイズのこととかメッセージ性のある物事をあのシンプルな絵の中で伝えているのがすごいですね。キースはやっぱり見かけると買っちゃいます。あとキースは絵を誰でもグッズとして買えるようにしたのが素敵だなって思います。
IMT
確かに絵画って本来は高いものですもんね。
RISA
そうですね。特に高い絵ってなかなか買えないじゃないですか。でもキースはそれをグッズ化して、そこでまた広めたっていうところにも影響を受けています。だからキャンバスとかもプリントして、Tシャツにして、キーホルダーにしているのは、誰でも絵を楽しめて、私の絵を気軽に使ってもらえる方が嬉しいなって思って。その反面、原画や大きなタフティング作品に関しては、手放すと見てもらえる機会もなくなるのと、制作に時間がかかっている分、思い入れも強いので、安売りしたくないという思いがあります。
IMT
RISAさんのイメージって、初めて描いたジャケットはデ・ラ・ソウルの『3 Feet High and Rising』で、名刺はジャングル・ブラザーズの“Doin’ Our Own Thang”の12インチのジャケットをモチーフにしていたりと、ネイティヴ・タンズが大好きなんだろうなっていう印象があるんですが、彼らのアートワークからの影響もあるんでしょうか?
RISA
そうですね、書道をやっていた影響もあって、そもそも手書きの文字がすごく好きなんです。デ・ラやトライブのジャケットとか。手書き風の文字のジャケットってあまりないじゃないですか。ジャングル・ブラザーズもカラフルで手書きっぽい感じで、それが大好きなんですよね。手書きだと一気に雰囲気が緩くなるというか。だけど、曲はめちゃくちゃカッコいいっていうギャップが好きです。
IMT
では、この流れで「TRiBE展」について聞かせてください。あれはRISAさんが企画されたものですか?
RISA
はい、そうです。
IMT
「ネイティヴ・タンズ」展じゃなくて「TRiBE展」と、アーティストを一つに絞ったのには理由があるんですか?
RISA
思い付きだったのと、ちょうどトライブのセカンド・アルバムが30周年で、ヴァイナルがボックスで出るみたいな話があって。
IMT
一年くらい延期して、先日ようやく出た〈 Get On Down 〉からの7インチ8枚組のボックスですね。
RISA
そうです、あれが出るって聞いて、「時期的にもちょうど良いな」って思ったんです。そのタイミングで、日本でもトライブが好きで、ヒップホップを題材にしてアートをやっている人たちと展示会したら面白いものができるなって。これだけデジタルが普及してて、言ってしまえば誰でも絵が描ける、誰でも絵描きって名乗れちゃう時代で、そんな中でも「この人は本当にオリジナリティを追求していてヤバいな」っていう、お互いリスペクトし合える人たちと展示ができたら絶対面白いだろうなって思って。グループ展は間違いなくプラスになる刺激をもらえるんですよね。マイナスになることはないので。他のすごく良い物を作ってる人たちに新しい道が開けたらな、開けるきっかけにでもなれたらなって思ったのも理由ですね。お互い高め合いたいっていう気持ちが一番だったかもしれません。
IMT
トライブってやっぱり特別なグループで、ある意味ヒップホップで一番人気のあるグループと言っても過言でもないと思うんですが、それに対してプレッシャーはありましたか? 好きな人が多いからこそ、厳しい目で見られるんじゃないか、とか。
RISA
それはなかったです。お声がけした人たちは熱意があってクオリティ高いものを作る人たちなので、自信を持って、私自身もぐうの音も出ないような作品を作るという意気込みでやりました。ただ企画してアーティストさん方に作品を作っていただくからには、たくさんの方々に観ていただきたいですし、展示場所を貸してくださったギャラリーにも、できる限り還元できるようにしたいという責任感はありました。
IMT
時系列が前後してしまうんですけど、「TRiBE展」の前に下北沢のCOUNTER CLUBとその後にFACE Recordsでも展示をされていましたよね。クラブとレコード・ショップって、ヒップホップにおける二大現場ですけど、あえてギャラリーではなく、そういった場所で展示を行ったのには理由があるんですか?
RISA
どちらもお声がけいただいたものではあるんですが、今までもお声がけいただいて、合う場所、合わない場所っていうのは絶対にあると思っていて、「どこでも展示しますよ」っていうスタンスはちょっと違うかなって思っています。でもクラブとかレコード・ショップっていうのは、描き始めたときから絶対やりたいって思っていた場所なんですよね。初めての個展のときもレコード・ショップっぽくしたくて、FACE Recordsさんはまさに参考にしたお店だったので、そこで三年後に展示ができたっていうのはめちゃくちゃ嬉しかったです。
IMT
ちなみにCOUNTER CLUBはどういった経緯で?
RISA
店長のMOEさんが、昨年の年末に「うちで展示しませんか?」ってDMをくれたんです。元々MOEさんはお客さんとしてTシャツとか買って下さっていて、実際に会ってお話をして、フィーリングもすごくあって、その流れで一ヶ月半くらい展示させてもらいました。
IMT
ではFACE Recordsはどういったきっかけで?
RISA
元々はFACE Recordsで一緒に展示したYURIさんから「RISAさんの絵で刺繍したいと思ってて、よかったらコラボしませんか?」ってお声がけいただいてたんです。ちょうど私もYURIさんの刺繍いいなって思っていたので「是非やりましょう!」ってなったんですけど、「でも展示場所どうしましょうかね?」って、そのときちょうどお声がけくださったのがFACE Recordsさんでした。
IMT
巡り合わせがあったんですね。ただ展示するだけじゃなくって、トート・バッグを作ったり、キャプテン・ヴァイナルのお二人にDJしてもらったりとか、そういう内容もRISAさんの方で企画されたんですか?
RISA
企画会議はほとんど一緒にやったんですけど、キャスティングやオファーはFACE Recordsさんが全てやって下さりました。「キャプテン・ヴァイナルにオファーしようと思っています」って聞いたときはYURIさんと一緒に驚きました。
IMT
ちなみにレコード・ショップだからこれを置こうとか、クラブだったらこれを置いた方がいいかなとか、意識して展示内容を変えたりはされたんですか?
RISA
FACE Recordsさんでは、SHIBUYA店では元ネタ系を入れたりしました。YURIさんとコラボするっていうのもあったので、少し深掘りしたネタとかもやりたいなと思いまして。でも、MIYASHITA PARK店は商業ビルということもあって、もっとキャッチーな感じにしました。また、COUNTER CLUBも曲に詳しい方がたくさんいらっしゃるので、有名どころばかりを展示するのではなく、分かる方には分かるネタを入れることを意識しました。
IMT
FACE Recordsの展示とBE AT TOKYOの展示を観て思ったのが、こういう展示会だと割とビギーとか2パックといった、そのジャンルのアイコンをモチーフにした作品が多くなりがちじゃないですか? もちろんRISAさんもTLCやビギーを描いているんですが、ただUMCズやスーパー・ラヴァー・シーとか、マニアックなアーティストの割合も多いなって思って。展示作品を選ぶ際のこだわりってあるんでしょうか?
RISA
ただ好きな曲というか、スーパー・ラヴァー・シーだったら“Romeo”あるじゃないですか。あれはめちゃくちゃ思い入れがあって。IPPOさんに習っていたときに、ローズフェスタっていうイヴェントであの曲で踊った思い出の曲なんです。UMCズもダンサー向けの曲が多いですよね。なので、これまでダンサーとしてやってきて好きな曲を描いています。踊っててノレる感じの絵かも。クール・スクールの“My Girl”とかもまさにそうですね。
IMT
ちょうど次の質問で聞こうかなと思っていたことが、今まさに答えてもらったことになるんですが、ダンサー・グループのジギーとかEPMDのバック・ダンサーだったスティーゾとかを描いているのもそうですけど、RISAさんのダンサーとしてのバックグラウンドが、描く題材を選ぶときとか、いろんなところに表れているということですね。
RISA
そうですね、まさにそれです。ジギーで言ったら曲だけじゃなくってファッションも。
IMT
ラルフ・ローレンの?
RISA
そうそう。ジギーと言えばそれ。ジギーからなんですよね? ラルフ・ローレンがヒップホップで流行ったのって。そのとき私は三、四歳だったのかな。
IMT
92年ですもんね、ジギーは。
RISA
なので、リアルタイムでは学べていないんですよね。PVとか観て「うわ、ファッションもダンスもめっちゃカッコいい!」ってなるじゃないですか。知識は当時を知っている人たちに比べたら全くないんですけど、音で覚えていたり、「昔あの曲で踊ったなー」っていう記憶で調べて、「あ、こんなジャケットなんだ」って感じで描くことが多いですね。
IMT
展示物の種類については、元々はプリントだったと思うんですけど、どんどん増えていますよね。今は何種類くらいあるんでしょうか。BE AT TOKYOは全部手書きですか?
RISA
プリントと原画が混ざっていますね。あとタフティングで制作したラグ・アートですね。
IMT
あとはTVシリーズですよね。それらがメインですか?
RISA
そうですね、メインです。
IMT
展示を観ていてやっぱりTVシリーズが一番目を引かれました。あの立体感に。あれは何から着想を得たんですか?
RISA
あれはですね、一昨年にKAZUMAさんっていう、レコードを掘って、さらにそのレコードを彫ってアートを作る方と、TKOさんっていう造形されている、先ほどの「TRiBE展」でもフィギュアや立体作品を作られている方と私の三人で展示会をしたんです。そのとき私はプリントだけだったんですよ、展示物が。デジタルで制作することが多かったので、それでそのときもプリント作品を展示したんですよね。
IMT
作品自体は増えているけど、プリントっていう手法は変わっていなかったということですね。
RISA
そうです。それで、お客さんは自分の知り合い含めてたくさん来てくださったんですけど、知り合いの方ですら私の展示物をちらっと観て、KAZUMAさんとTKOさんのところはじっくり観ているんですよね。在廊しててわかったんですけど、やっぱりあっちに行ったら「すごい」って言って観てるんですよね。それがとても悔しくって。でも私もKAZUMAさんとTKOさんの作品を観た瞬間に「すごい」ってなったので。「RISAさんの絵可愛いね」って言ってくれるんですけど、「すごい」って言葉は出てこないんですよ。「やばい!」みたいな感じにはならなくって。KAZUMAさんは二作品で、TKOさんも多分七、八作品だったんです。
IMT
お二人とも展示数自体は多いわけではなかったと。
RISA
そうです。逆に私は数は多かったんです、多分二十点くらい。それでもやっぱり少なくても熱量があるところに集まるんだなって思って。本気で足止めて観てもらいたいんだったら、プリント以外でもちゃんとやらないと止まってもらえないんだってことにそこで気づいたんですよね。で、次に813 GalleryでA4サイズの作品縛りのある「A4展」に参加するときに、「何にしよっかな?」ってなったんです。私のジャケット・アートって12インチなのでA4ではなくって。雑誌はプリントでやったことがあったんですけど、でも雑誌は前回、私が参加していない「A4展」でTKOさんがやっていたんですよね、立体で。それじゃただの真似になっちゃうし、「何がいいんだろう?」って色々と調べて。四角いもので、かつアートになるものって考えてるときに、「あ、TVだ」って思って。オーナーに聞いてみたら額はなんでもよくて、ただ絵のサイズがA4であれば大丈夫って言われたので、じゃあもう額を立体にして作ろうと。TKOさんみたいに粘土とかでは作れないけど、木でこうドン!って感じで(笑) フレームをああいう風にしている人は多分いないから、これで勝負してみようって思って生まれたのがTVシリーズなんです。
IMT
FACE Recordsの展示ではトライブやデ・ラ・ソウルとか色々とTVシリーズを飾っていたと思うんですけど、そのときはプーバとメアリー・J・ブライジのものですよね?
RISA
はい、あのMTVのライヴのやつです。「やっぱりTVと言えばMTVだよね」って思って。なのでトライブより先にあのプーバとメアリーで一作目を作って、二作目はやっぱりトライブにしようって。「こういうTVがあったらいいな」くらいの感じで作りました(笑)
IMT
あのプーバのMTVのライヴを題材にしたのは正直すごいなって思いました。
RISA
私の周りの人とか、ダンスやってない人でも90年代のヒップホップのファッションやカルチャーが好きな人は、やっぱりあのプーバとメアリーの映像が大好きな人多かったので。クロス・カラーズが好きだったのもあるんですが。
IMT
同じくらい目を引くのはタフティングですが、あれを始めたきっかけは?
RISA
タフティングは、コロナの自粛期間中に海外のYouTubeとかインスタでやってる人が増えたんですよね。日本にはあんまりいなかったんですけど、KEKEさんっていう国内でワークショップを始めたスタジオがあって。たくさんの人たちがそのワークショップを受けに行って、それから一気に広がったんです。私も受けに行こうって思ってたんですけど、すぐ予約が埋まっちゃうんですよ(笑) 本当にすぐ埋まっちゃうので、自分で機械を買ってやらないと絶対出遅れると思って。やりたいと思ったときじゃないと熱が冷めるじゃないですか。なので機械を買って、始めました。
IMT
じゃあ今のイラストレーターの活動に繋げようというわけではなかったんですね。
RISA
そうですね、タフティングでジャケットを作ろうって発想はなくって。ただ楽しそうだな、くらいの感じでした。
IMT
インスタグラムで1,000枚のジャケットを描くという目標で投稿されていますが、80年代、90年代のヒップホップやR&Bだけじゃなくって、リッゾのような新譜から山下達郎の名盤まで幅広く描いていますよね。どんな基準で選んでいるんですか?
RISA
単純に良い曲だなって思ったからです。描き始めの頃は80、90年代のものしか描いていなかったんですよね。ただ、描いていくうちに、ジャケットが良くて、なおかつ曲も良いってなると、結構ネタが尽きてくるというか、自分の作品の幅を狭めているなと思ってきて。そう考えているときにIPPOさんに「マイルスとかジェームス・ブラウンを描いてほしい」ってリクエストがあって、ジャンルや年代の幅を広げた方が自分の知識の幅も広がるし、新譜もしっかり追えるし、旧譜ももっと深いところまで追えるから、「むしろこっちの方が良いよね」って思えるようにもなって。勉強にもなるから「よし、この方向性でやろう」って決めて、「もしかしたらもっと好きなものが出てくるかもしれないし」っていう感覚で、今は色々ミックスして描いています。
IMT
1,000枚っていう目標を決めたきっかけは?
RISA
「目を変えてるだけじゃん」って言われることもあったんですよね。で、先輩と「1,000枚も描いてたら流石にそんな風に言われないよね?」って話をして。ちょっと悔しかったので「1,000枚描いてやる」って始めたことなんです。
IMT
確かに1,000枚も描いたら文句も言えないですね。でも1,000枚描くって結構キツいですよね。
RISA
キツいです。なんで言ったんだろ?って思ってます(笑)
IMT
一枚描くのにどれくらいかかるんですか?
RISA
ジャケット・アート・シリーズはデジタルがメインなので、早くて一日でできることもあるんですけど、長くかかっても五日くらいかなと。
IMT
1,000枚達成した暁にやってみたいことってあるんですか?
RISA
そうですね、図鑑みたいな本を出してみたいのと、年代別にしたものとかも面白いと思うし、この前ちょうど友達とも話していたんですけど、大きいところを貸し切って70年代コーナー、80年代コーナーみたいな感じでブースを分けて展示したいなっていうのはあります。そしたら好きな人たちが集まって、年代問わずのパーティーができるなって。
IMT
1,000枚シリーズに限った話ではないんですが、アーティストからの反応ってダイレクトにあったりするんですか?
RISA
アーティストからですか? それで言ったら、FACE Recordsさんの展示終了後も飾っていただいていたアーマッド・ジャマルの『The Awakening』を、ザ・ルーツのクエストラヴがFACE Recordsさんにたまたま来たときに観て、「売って欲しい」ってDMをくれたんです。あれはFACE Recordsさんがご厚意で展示終了後も店舗に飾ってくださっていたものだったので販売はしていなかったのですが、FACE Recordsさんの機転でクエストラヴの元へ渡りました。
昨日FACE RECORDSにQuestloveがご来店され、店舗に飾っていただいていたアートを気に入ってくださったそうで、こんな素敵な一枚を撮っていただきました🙏✨
— RISA (@risa_attitude) August 26, 2022
前日にBillboardでTHE ROOTSのライブを観た後の出来事だったのもあって感動しました😂✨
ありがとうございました☺️❤️ pic.twitter.com/PMcPxdIP8w
IMT
1,000枚シリーズはいわゆるアルバムのジャケットが題材だと思いますが、インスタのこれまでの投稿を見ていると、ジャケットに限らず色々と描いていますよね。中でも僕が目を引かれたのはメイン・ソースの“Live at the Barbeque”のライヴのワン・シーンで、あれを描くのがすごいなって。
RISA
まだナズが爆発的に売れる前の、メイン・ソースとライヴしているシーンですよね。
IMT
はい、それです。先ほどのTVシリーズの題材もプーバとメアリーのMTVのライヴだったり、スパイク・リーの有名なNIKEの広告とか「ドゥ・ザ・ライト・シング」の劇中のシーンとかも描いているので、ヒップホップ好きな人だったら思わずニンマリしちゃうようなものが多いなって。分かる人には分かるというか、知ってる人には気づいてもらいたいようなこだわりがあって描いてるんでしょうか?
RISA
こだわりというか、自分がそのときに印象に残ったことを絵に残すことで、より記憶にも残るし、絵にすることで深く調べるきっかけにもなるし、すごく大事なことと思っていて。おじいちゃんが日記をつけていたので、そういうのを見てて、その日に起こったこととか、その日に感じたことを記憶じゃなくって絵でアウトプットすることが大事だと思っているので、特に狙ってというわけではなかったです。
IMT
RISAさんの作品にはヒップホップ・カルチャーへの愛情をすごく感じます。RAP ATTACKやAPPLEBUMのようなブランドからオファーが来るのも、「ヒップホップ大好きなんだなこの子」っていうのが伝わっているからだと思います。
RISA
そうですね、ありがたいですね。どちらも声をかけていただく前に一回会ってお話させてもらったので、自分がどういう風にこのカルチャーを好きになっていったのかっていう、絵だけじゃわからない部分、内面を知ってもらって、その上で一緒にやろうって思ってくださったと思うんですよね。
IMT
ヒップホップへの愛情が深いなって感じる反面、RISAさんの絵が好きな人の中には、ライトにヒップホップを楽しんでいる人もきっといるじゃないですか。例えば「ドゥ・ザ・ライト・シング」を観たことないけどヒップホップ好きなんだっていう人たちにも、自分のアートを楽しんでほしいっていう気持ちはあるわけですよね?
RISA
もちろんです。世代が違うから、「それ観てないんだったらヒップホップ好きじゃないよ」みたいに言うのは違うな、それじゃ若い子がヒップホップ離れしちゃうのかなって思っていて。むしろ自分自身が若者から学ぶこともあるので。ちょっとおこがましいんですが、世代の架け橋というか、私の絵をきっかけに若い子が昔の音楽に興味を持ってくれても嬉しいし、逆に昔のヒップホップが好きな人に「RISAが描いている新譜のこれ、気になるな」って感じで知ってもらえるのもうれしいなって思っていて。入口は「この絵可愛い」でいいから、より深く知ってもらえるきっかけになれば、カルチャーに少しでも還元できているのかな?って思います。
IMT
バランス感覚を重視しているっていうことですね。
RISA
そうなんですかね? でも、絵を描くことによって十代、二十代の若い子たちとも関わるようになったんですけど、やっぱりあまり知らなかったとしてもヒップホップが好きっていう気持ちはみんな本当に純粋で。逆に私も先輩に話を聞いてて「それ知らないです」っていうこと結構あるんですけど、「え、こんなことも知らないの?」って言う人はそんなにいなくって。「こういうのがいたんだよ」、「あのときああだったんだよ」って優しく教えてくれるんですよね。それだとやっぱりカルチャーに入りやすいし、もっと好きになれるので、「ヒップホップ好きならこれくらい知っとけよ」っていうスタンスは私は違うかなっていう考えです。
IMT
その架け橋っていうところで言うと、RISAさんは展示に来たお客さんとのコミュニケーションをすごく大切にされている方だなって思っていて、積極的にコミュニケーションを取ることは意識しているんですか?
RISA
はい、そこはめちゃくちゃ意識しています。少し人見知りなところもあるんですけど、展示をやり始めて、人に会う機会、話す機会が増えたおかげでだいぶ人見知りも減ってきて。お客さんもわざわざ電車賃かけて、時間を作って来てくれるわけじゃないですか。状況によっては対応できないときもありますが、来てくれた方とはできるだけ、音楽の話だけじゃなくても、例えばどんなきっかけで知ってくれたのかはやっぱり気になりますし、私の絵を良いと思って来てくれたわけなので、少しでも「話すの楽しかったな」って思ってもらえるだけでもいいなって思っていて。やっぱり来てくれる人、観てくれる人がいないとそもそも仕事にならないので、お客さんのことは常に大事にしたいと思っています。
IMT
コミュニケーションに近い話ですが、お絵描き教室や缶バッヂ作り体験など、子供に絵を描く面白さやモノを作る体験をさせる取り組みもされていますよね。
RISA
そうですね、人見知りとか言っておきながら、コミュニケーションを取るのが好きなのと、やっぱりダンスのインストラクターをしているので。初めて個展を開いたときに、ただ個展だけだとなんか寂しいかなって思って、レッスンに通ってくれていた子の親御さんに「何かやりたいことあります?」って聞いてみたら、「先生に子供たちに絵を教えてほしい」って返ってきたんです。「絵を描くのは好きだけど、なかなかお絵描き教室に行く経験ってないし、RISA先生にダンスとはまた違う感じで絵を習ってみたい」って言ってくれて、「えぇ!」って感じだったんですけど、よく考えてみたら「確かにお絵描き教室って面白いかも」って思って。実際やってみたら意外とみんな楽しんでくれて、「ダンス以外でもこういう風に体験的な感じで何かやるのも面白いな」と思ったし、私も小さい頃は習い事をたくさんやっていた子だったので、その頃のちょっとしたきっかけって記憶に残っているものじゃないですか。缶バッヂでも何かを作るっていう経験で夢が出来たらいいなって思ったりもして、そういうきっかけになれればいいなって思いでやっているのもあります。
IMT
続いてRISAさんのブランドの「ATTITUDE」について聞かせてください。ブランド名の由来はなんですか?
RISA
元々は個展のテーマだったんです。クラウド・ファンディングで行った初めての個展のタイトルが「ATTITUDE」でした。タイトルについて話してたときにIPPOさんが「俺は“attitude”っていう言葉が好きなんだよね」って言っていて、自分も色々調べているときから“attitude”が候補にあったので「これだ!」って一番に思いました。その後、ロゴを考えてるときにIPPOさんに相談したら「標識とか日常に溢れてるものに意外とヒントあったりするんじゃない?」ってアドバイスしてくれて、色んな標識を見たり調べたりしていたらイギリスの地下鉄の標識が目に入って。
ラージ・プロフェッサーが“New Train Ole Route”で「自分たちが今こうして走っていられるのは、昔の人たちが作ってくれたレールがあるからだ」って感じのことを言っていて、それについてはごもっともだな、新しいものを生み出せるのは昔の人が敷いてくれたレールがあるからだなっていう共感があったので、電車繋がりでその地下鉄の標識をロゴのベースにしました。自分一人では新しいものはやっぱり生み出せないし、温故知新っていうこだわりは姿勢として絶対に持っておきたいと思っていたので、ロゴと“attitude”っていう言葉がちょうど上手くハマった感じです。
IMT
だからブランドのキャッチ・コピーが「Visiting Old Learn New」だったんですね。
RISA
そうです。昔IPPOさんと一緒に「Old to New」って書かれたデザインのTシャツを作ったんですけど、それがすごく頭に残っていて「温故知新で行こう!」って。
IMT
ヒップホップは特にサンプリング文化なので、温故知新なところがありますもんね。
RISA
そうです、自分の絵もまさにそうなので。そこはリスペクトの気持ちだから、それを無くしちゃったら人としてもアーティストとしてもダメになっちゃうって思っていて。だからそういった姿勢は絶対に崩さずにやっていきますっていう決心を込めています。
IMT
「ATTITUDE」の今後の方針や方向性は?
RISA
もっと認知度を上げて、公式コラボレーションを行えるようにしたいのと、商品や作品を通してカルチャーの大切なことを分かりやすく伝えられるブランドにしていきたいです。そのため、一人で行えることにも限界があるので、同じような想いで一緒に行動してくれる仲間を集め、面白いものを発信していけるようにしたいと考えています。
IMT
コラボしてみたいブランドってあるんですか? 例えばラルフ・ローレンとか。
RISA
ラルフ・ローレンさんは絶対したいですね。でもコラボしたいブランドやアーティストはたくさんあります。
IMT
今の活動で一番モチベーションになってることはなんですか?
RISA
一番はやっぱりギャラリーで展示して、それを観に来てくれるお客さんが感動したり、喜んでくれている姿を見られる瞬間がモチベーションになります。特に自粛期間が長かったから、展示行くのもちょっと・・みたいな雰囲気があったじゃないですか。でもそれも最近は落ち着いてきて、やっと人が戻ってきてくれて、楽しそうに「この時代の音楽が大好きなんです」って会話ができるときに「あ、やっててよかったな」って思いますね。
あとは今年UNDER ARMOURさんに天王寺アイルのカリー・コートのアートのお仕事をいただいたんですが、公式でやらせてもらったのは初めてだったんです。元々はジャケットのサンプリング始まりだったのに、こうして私の絵を認めてもらえて、NBAのトップ・プレイヤーの方の絵を描かせてもらったことは、イラストを描く上で自分の自信にも繋がりました。あのお仕事以降、お声がけしていただく機会も増えてきたので。カリー選手も「とにかく努力を続けることが大事」っておっしゃっていたんですが、本当にそうだな、続けていたら見てくれている人は見てくれているんだなって思って。カリー選手のお仕事も、元々インスタをチェックして下さっていたみたいなんですけど、実際にBE AT TOKYOの展示を観に来てくれて、それで決まったということもありますので、どこで誰と繋がるかわからないし、誰が応援してくれているかわからないから、すぐに反応がなくっても、自分が好きなら続けること、信じることが大事だなっていうこともモチベーションです。
IMT
では最後に総括的な話ですが、このアーティスト活動を通して実現したい夢はありますか?
RISA
大きな美術館を貸し切って展示してみたいことと、やっぱり亡くなった後も歴史に残るようなアーティストになりたいです。あと、そろそろ海外で展示をやって、自分の力をあっちでも試してみたいとも思っています。国内だけじゃなくって逆輸入してもらえるようになりたいですね。
それと、私は元々ダンサーをやっていて、それで絵を描き始めたんですが、どっちかと言えば昔はダンスやるならダンスだけって感じで一点集中型だったと思うんですよね。もちろんダンス一本で成功することもめちゃくちゃカッコいいことなんですが、今はダンスやって歌を歌う人もいますし、ダンスをやって、そのバックボーンで絵を描いて、それで世界的に有名になった人はまだあまりいないと思うので、自分がそうなりたいって思っています。自分のバックボーンによって色んな選択肢があるよっていうことを、新しい道として子供たちに与えてあげられるような人になりたいです。
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