仕事柄、海外のレーベルやアーティストに「帯をつけて売っていいですか?」と交渉することは多いが、断られたことはなく、むしろ“Yeah, Obi is cool”という好意的な反応が返ってくる。昔から海外のレコード・コレクターの間では日本盤に付いている帯は「Obi Strip」の名称で親しまれ、「帯とは何か?」や帯を付ける理由、参考画像を詳細に掲載しているwikiもあり、日本盤CD限定のボーナス・トラックに並んで、帯はコレクターズ・アイテムだった。
最近では、昨今のヴァイナル・リヴァイヴァルの流れに乗ってか、帯もすっかり海外のマーケットで市民権を得て、コレクターがニヤニヤするためのアイテム以上の存在になってきた。海外から仕入れた輸入盤に国産の帯を巻いて、それを海外に輸出する、というビジネスがあるほどだ。さらに、海外プレスながら最初から帯が付いてる商品も増えてきている。レイアウト的に半ば強制的に縦書きとなるため、日本の縦書き基準のタイポグラフィのセンスやテクニックが求められる帯だが、海外産の帯で気になったものをいくつか取り上げてみたい。果たして帯はクールなのか?
〈 BBE 〉の「Beat Generation」シリーズとしてリリースされた第一作に始まり、今回で四作目となるピート・ロックのビート集。このシリーズはずっと「ピートストルゥメンタル」かと思っていたが、「ピートインストルゥメンタル」だったのか? アウトキャストの『ATliens』が「エーティーエイリアンズ」と発音されるのと同じことだろうか。残念ながら縦書きに対して「ピート」の「ー」の長音符が横になってしまっている。カタカナを縦書きにすることに慣れていないと陥りやすい初歩的なミスだ。「4700」とは定価表記だと思えるが、ディスク・ユニオンでの販売価格は5,720円だった。
クール・G・ラップとのジョイント・アルバム『Son of G Rap』をリリースした新進気鋭のラッパー兼プロデューサーの38・スペッシュ。ヒップホップにおけるゴールデン・エイジである「1994年」の25周年を記念したコンセプト・アルバム『1994』の続編となる『1995』は、グリーン・ランタンがミックスを担当したコラボレーション・アルバムなのだが、「緑のランタン」と「38スペシャル」はともかく「提示する」とは一体なんだろうか。おそらく「Green Lantern presents」という文章を日本語にしたかったのではないかと思われる。こちらも定価を「¥4150」と決めてしまっているが、円安で輸入業界が厳しいので、勝手に定価を決めるのはやめていただきたい。
マサチューセッツ州はボストンの復刻集団〈 Get On Down 〉は、さすが嗅覚鋭く、比較的早い段階からヴァイナルの再発に帯をつけていた印象だ。ただ、彼らは500枚限定生産など、主に製造枚数が限られている際にナンバリング(例:●/500)をするために、従来のステッカーから帯に切り替えたように見受けられる。日本語は見当たらないが、下手に「93から無限まで」といった気の抜けた直訳邦題が載るよりも英語だけのほうが安心だ。見栄えが良い反面、少し寂しい気もするが。
その昔、ゴーストフェイス・キラーの1stアルバム『Ironman』は『ムキムキマン』という邦題をつけられていたが、海外で帯付きで再発される場合も、どうせなら奇妙な直訳よりも一捻りした邦題に変えてほしい。モブ・ディープのセカンド・アルバム『The Infamous』の邦題『クイーンズの悪党』なんて、センスあるタイポグラフィで帯に大きく印字されたら素晴らしいと思うのだが。
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