ファンキー・マン、もしくはアンダー・ボスことロード・フィネスのキャリア通算3枚目、ソロとしては2枚目となるアルバム。前作『Return of the Funky Man』(92年)から3年も空いてしまったが、その間に所属するDITCは各々がソロ・アルバムをリリースすることでシーンを席巻し、ビッグ・Lという、ナズにも匹敵する才能も送り出した。フィネス本人も、目覚ましい出来栄えである“MVP”を筆頭としたビッグ・Lのデビュー・アルバムのプロデュースや、ビギー『Ready to Die』の終焉を飾る佳曲“Suicidal Thoughts”、さらにはSWV“Right Here”のリミックスまで手がけ、ピート・ロックやDJプレミアに並ぶ、NYを代表するプロデューサーの一人となっていた。
発売年こそ96年だが、その大部分は94年頃、〈 Bandoola 〉というインディー・レーベルに籍を置いていた頃に制作されたそうだ。そのレーベルは、フィネスの他にグラウンド・フロアーというグループが所属しており、彼らの唯一のシングルであり、94年のアンダーグラウンド・ヒットとして名高い“One, Two”のB面“Dig on That”はフィネスのプロデュースだった。当時配布されたレーベルの宣伝フライヤーには「EP Album Coming Soon!」と銘打たれていたのだが、結局リリースされることはなかった。しかしその後、95年にニール・レヴィンとトム・シルヴァーマン(〈 Tommy Boy 〉の創設者)のジョイント・ベンチャーとして設立された〈 Penalty 〉と契約を交わし、幸いにもお蔵入りにならずに済んだ、という経緯だ。
ショウビズやダイアモンド・Dらのヘルプも借りていた前作とは異なり、本作ではトータル・プロデュースをフィネス本人が担当。「ファンキー・マン」というエイリアスを前面に押し出し、ファンクのサンプリングに偏った雄々しく勢いのあるプロダクションだった前作に比べると多少地味な印象は残るかもしれない。しかし、代表曲となったジャジーでスムースな“Hip 2 da Game”、ソウルフルに蕩ける“Gameplan”のシングル2曲を例に、そのサウンドの依り代をジャズやソウルに変え、キャッチーとハードコアの絶妙なバランスを保ちながら展開していく甘苦いサウンドスケープは抗い難い魅力がある。DITCの仲間からの援護射撃以外にもゲストは多彩で、OCからフィネス、そしてブーギーダウンの先輩KRS・ワンへとマイクがパスされる“Brainstorm”や、サダト・X、ラージ・プロフェッサー、グランド・プーバが名を連ねた豪華なボーナス・トラック“Actual Facts”は特に素晴らしい。KRSワンは、“No Gimmicks”での熱気溢れるパフォーマンスも最高にドープだ。