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DAS EFX

DEAD SERIOUS

1992, East West

DAS EFX | DEAD SERIOUS

 「レコード契約と賞金の100ドル、どっちが欲しい? 5分後に楽屋に来てくれ」 EPMDのパリッシュ・スミスは、審査員を務めたヴァージニア州のローカル・タレント・ショウで、優勝を逃し落胆している二人の若者にそう告げた。明らかにその二人組のパフォーマンスが一番観客を沸かしていたし、実際、審査員の投票で最高得点だったのは彼らだった。だが、結果発表の直前にパリッシュが司会に何やら耳打ちし、その後に発表された優勝者は大方の予想を裏切り別のグループだった。優勝賞金の100ドルは手に入れ損ねたが、代わりにその何千倍も稼げる契約を手にした二人組の名前はドレイとスクーブ。名前のイニシャルの組み合わせ(Dray And Skoob)と、ヴォーカル・エフェクトを好んでいたことから、ダス・エフェックスという。

 K・ソロに続いてEPMDが自分たちのクルーであるヒット・スクワッドに招き入れたダス・エフェックスは、EPMDの後ろ盾もあり〈 Jive 〉と〈 East West 〉の間で争奪戦が行われた。〈 East West 〉のA&Rであったクラーク・ケントがとりわけ彼らにご執心だったのと、〈 Jive 〉側の不義理を理由に二人は〈 East West 〉との契約を選ぶ。その不義理とは、〈 Jive 〉が同時期に契約した新人グループのフー・シュニッケンズが彼らのスタイルを丸々とコピーしていたことだった。単語の末尾に「-diggity」や「-iggity」をつけるナンセンスな言葉遊びと、騒々しく、暑苦しく、舌が絡みそうになる嵐のようなフローを組み合わせたスタイル(彼らはそれを「スーエッジ(sewage)」と呼んでいる)は、フー・シュニッケンズに限らず、クリス・クロス、ロード・オブ・ジ・アンダーグラウンドなど数々の同業者、さらにはデイヴ・チャペルのようなコメディアンにまで影響を与えることになる。先行シングル“They Want EFX”で先制パンチを喰らわせた後にリリースされた本作は、その「スーエッジ」スタイルでシーンを席巻し、EPMDですらなし得ていないプラチナム・ディスク(100万枚以上)となる売上を記録する。

 誤解されがちだが、EPMDの二人はエグゼクティヴ・プロデューサーの立場に留まり、実際のプロデュースはスクーブの高校時代からの友人であるクリス・チャリティーとデレク・リンチからなるプロダクション・ユニットのソリッド・スキームが担っている。オープニング・トラックの“Mic Cheka”と続く“Jussumen”、そしてセルフ・プロデュースの“They Want EFX”と続く冒頭の3曲は彼らのオリジナリティが浮き彫りになっており、デビュー・アルバムとしては完璧といっていい立ち上がりだ。特にジェームス・ブラウンをサンプリングした“They Want EFX”のファンキーな狂乱は素晴らしい。制作過程でEPMDには都度意見を仰いでいたということで、“East Coast”“Brooklyn to T-Neck”“Straight Out the Sewer”と、EPMDのファンクの流儀を踏襲したザップ〜Pファンクの香りがする曲が随所に挟まれており、それがクオリティの底上げをしている。件のタレント・ショウで披露したアマチュア時代のデモ・テープからの1曲“Klap Ya Handz”に残された荒削りな一面も魅力的な、隙のない逸品だ。

TRACKLIST

01. Mic Checka
02. Jussummen
03. They Want EFX
04. Looseys
05. Dums Dums
06. East Coast
07. If Only
08. Brooklyn to T-Neck
09. Klap Ya Handz
10. Straight Out the Sewer

PRODUCER

Solid Scheme
Das EFX

SINGLE

Mic Checka
Straight Out the Sewer
They Want EFX
If Only / Dums Dums

SURE SHOT SONG

Mic Checka
They Want EFX

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