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K-SOLO

TIME'S UP

1992, Atlantic

K-SOLO | TIME'S UP

 ペンシルヴァニア州ピッツバーグで、従兄弟が経営するクラブのブッキング・プロモーターを行なっていたサム・スニードが初めてブッキングしたアクトがK・ソロだった。プロモーター業と並行し、自らもラファー・ザン・モーストというグループを組み、デモ・テープを作っていたサムは、K・ソロを空港から街へ車で送る際に、自身や地元の仲間の曲を次から次へと聴かせた。ある曲が流れたときにK・ソロは興味を示し、「ヨォ、このトラックは誰が作ったんだ?」と質問した。「オレとオレのパートナーだ」とサムが答えると、K・ソロは「ニューヨークに来て、オレのアルバムのプロデュースしないか?」と提案した。後にドクター・ドレーと数々の曲を世に送り出すサムは、このようにしてヒップホップ・ゲームに参入した。

 K・ソロはソース・マガジンのインタヴューにおいて、パリッシュ・スミスがセカンド・アルバムのプロデュースをしてくれなかったことで、彼との間に深刻な軋轢が生まれたと認めている。事実、前作『Tell the World My Name』では、エリック・サーモンが手掛けたシングル“Spellbound”以外はすべてパリッシュがプロデュースしていたが、本作ではPの字の出番は2曲のみで、しかもそのうちの1曲はコ・プロデュースだ。代わりに、自ら登用したサムが過半数を超える6曲を担当している。そのサムが、EPMDのヒット・スクワッド崩壊後にドクター・ドレーの元に自らを売り込み、結果的にドレーのお気に入りプロデューサー/MCとなった未来を踏まえると、K・ソロには先見の明があったようだ。

 自分に関する流言飛語に対して「もう我慢できねえ」と怒りを露わにするシングル“I Can’t Hold it Back”を皮切りに、Pファンクのサンプリング多めのサムのビートは、全体通して悪くない。だが、“Premonition of a Prisoner”“Who’s Killin’ Who?”は、K・ソロよりもむしろ2パックのラップが似合いそうなギャングスタ・ラップのサウンドで、サムとパリッシュが共作した“Sneak Tip”のほうが、主役のスタイルに合っているのは否めない。エリック・サーモンが手がけたモダン・ソウル・テイストの“The Baby Doesn’t Look Like Me”と続けて聴くと、やはりEPMDのグルーヴが恋しくなってしまう。そうした中で、「レターマン」が得意のスペルバウンド・スタイルを乱射する“Letterman”は、ファンキーなオルガンとディレイの効いたホーンが騒々しく盛り上げる、ピート・ロックのサンプリング・マジックが冴え渡る素晴らしい曲だ。アルバムの中では浮いているが、それを瑣末なものと言わせる魅力がある。本作のリリース後、パリッシュのワンマン体制に嫌気がさしたK・ソロはヒット・スクワッドを離脱するが、流れ着く先は、奇しくもサムと同じ〈 Death Row 〉となるのだった。

TRACKLIST

01. I Can't Hold It Back
02. Letterman
03. Long Live the Fugitive
04. Premonition of a Prisoner
05. Sneak Tip
06. The Baby Doesn't Look Like Me
07. The Formula (House Party)
08. Who's Killin' Who?
09. Household Maid
10. Rock Bottom
11. King of the Mountain

PRODUCER

Sam Sneed
PMD (Parrish Smith)
K-Solo
Erick Sermon

SINGLE

I Can't Hold It Back / Rock Bottom
Letterman

SURE SHOT SONG

Letterman
The Baby Doesn't Look Like Me

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