「エリックとパリッシュは金儲けするぜ(Eric & Parrish Making Dollars)」という野心剥き出しのユニット名の割にはそれほど稼げていないだろうが、ベンジャミンの枚数だけで、彼らの功績は測れない。エリック・“E・ダブル”・サーモンとパリッシュ・“PMD”・スミスの二人からなるこのデュオは、このデビュー・アルバムによって、NYのヒップホップがジェームス・ブラウン依存症に陥っていた80年代後半、他と異なるビート・メイキングのアプローチで東海岸のヒップホップに新しいファンクをもたらした。
レッド・アラート、ミスター・マジックの双方がヘヴィ・プレイしてヒットに繋がったデビュー・シングル“It’s My Thing”は、パリッシュが「ジャジー・ジェイのテープで知ってた。パーティを盛り上げるにはあの曲が一番だったんだ」と語るように、ブレイクビーツの古典(ザ・ホール・ダーン・ファミリー“Seven Minutes of Funk“)を使ったものだが、彼らを一際ユニークな存在として引き立てたのは、むしろB面に収録された“You’re a Customer”だった。ブルース・ロックの大御所ZZトップのヘヴィなベース・ラインとリン・ドラムを組み合わせてグルーヴさせたこの曲で、EPMDの二人は、JBズが奏でる灼熱したホーンやギター以外にもファンクを掘り当てることができると証明してみせた。
それ以外にも、タイトル・トラックの“Strictly Business”におけるエリック・クラプトンの中にファンクを見出すセンスや、代表曲“You Gots to Chill”で始まるザップ~ロジャーへの偏愛など、当時のNYにおいては一般的ではなかったサンプリング・ソースを好んで選んでいたことや、“ベース”に対して異常にこだわっていたことから、西海岸のグループだと勘違いされることも多々あったそうだ。そのレイドバックしたファンクのグルーヴに乗せて、ラキム以降主流となったスロウなフローでオレ様自慢のライムをデリバリーするというEPMDの勝利の方程式は、処女作となる本作で早くも確立しており、次作以降は、言うなればその方程式の洗練の歴史となる。アレサ・フランクリンの“Rock Steady”を下敷きにした“I’m Housin’”はオリジナルも素晴らしいが、12インチ・シングルに収録されたUKミックスも聴き逃し厳禁(25周年記念盤に収録)。