ラキム、ビッグ・ダディ・ケインに並ぶラップ・ジニアス、クール・G・ラップとその相方のDJポロによるユニットのセカンド・アルバム。前作『Road to the Riches』はマーリー・マールによるトータル・プロデュースだったが、今回は関与なし(ボーナス・トラック“Riker’s Island”はマーリーのビートだが、これは前作に収録漏れした87年のシングルだ)。代わりに起用されたのは、ポロの古い友人であるエリック・Bが連れてきた、当時まだ17歳だったラージ・プロフェッサー。
教授は、エリック・B&ラキムのサード・アルバム『Let the Rhythm Hit ‘Em』で、師匠であり、制作途中で凶弾に倒れたポール・Cの代わりにプロダクションを完成させるという大役を果たしたことでエリック・Bにその才能を買われ(しかし『Let the Rhythm Hit ‘Em』でクレジットは与えてもらっていないが)、エリックのプロダクション・カンパニーと契約を交わしたばかりだった。本作はプロデューサーとしてエリック・Bがクレジットされている曲が多いが、実際はアルバムのほとんどを教授が手掛けたとG・ラップは明かしており、彼がレーベルに「クレジットは“Produced by Large Professor”だ」と伝えたところ、それを見たエリックが怒り狂ったとも語っている。適切なクレジットがされていないためか、教授のディスコグラフィーの中では見落とされがちだが、華やかでありながらロウ、そしてジャジーなサンプリング・ビーツは彼の仕事の中でも随一の出来で、90年代の幕開けにリリースされたアルバムに相応しいサウンドだ。
G・ラップ版“What’s Goin On”である“Street of New York”は、ナズの“NY State of Mind”に影響を与えた名曲。これと、ジュース・クルーの同胞であるビズ・マーキー、BDKと共に人種差別批判を行う“Erase Racism”、そして、荒馬のようにヘヴィなベースを乗りこなすギャグスタ・ライフ・ストーリー“Bad to the Bone”という本作からのシングル3曲はビート、リリックどちらも秀逸。内容が生々しすぎてシングル・カットできなかったという“Talk Like Sex”、ポロによるプロデュースで、オールド・ファッションなジャズを意識した“Jive Talk”(中盤から聴こえるドラム・スティックの生演奏もファンキーだ)も、聴きどころ。ガラージやハウス好きだというポロの好みが表れたヒップ・ハウス・トラック“The Polo Club”も、当時の流行として忘れちゃいけない。